第二声

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怜は無我夢中で走る。   最近は遅刻が多かったらしく、これ以上遅刻は出来ないようだ。   ただでさえ勉強とバイトの両立で大変な怜は単位もギリギリで、これ以上問題を起こすと退学も有り得るらしい。   退学という文字を目の前に走る怜は気付いて居なかった。   歩行者信号が赤に変わるのに。   急いでいる車が、彼目掛けて突っ込んでくるのに。   グルグルと回る世界、   打ち付けられる身体、   少しずつ遠くなる視界に映る   真っ黒な、   猫……。   「まえ…は…生きろ……、も、う……死なせ、ねぇ……」   それが最後に怜の聞いた言葉だった。
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