待ち合わせ

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だが、それもできない。 相手は彼女で、しかもノートを借りる立場にある。 秋谷だって、関口の機嫌を損ねるような真似はしたくない。 待ち合わせを30分以上過ぎても彼女が来ないので、とりあえず公園を出ようと踵を返した。 そのとき。 ジャリッ 公園内の砂利を踏み締める音がした。ゆっくりと確実に歩くその音で、相手も何か目的があってここにいると分かる。 急速な安堵感から、秋谷は振り返った。 「良かった関ぐ…」 だがすぐ言葉を飲み込んでしまう。寒気がする。相手は関口ではない! 恐怖にかられた秋谷は、一心不乱に走り出した。公園を飛び出す。相手も関口を追って、走り出した。 陸上部である秋谷は、そう簡単に捕まらない自信があった。特に今は全力疾走だ。それに相手は、足音から推測するに女ということは間違いない。 しかし。走る音はすぐ後ろをピッタリとついて離れないのだ。 「…………っ…」 気力も体力も限界に近い。 早く家についてくれ!
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