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予鈴が鳴り、挨拶とともに教科書をしまう。クラスメート達はすぐに自分達のパートナーの所へと向かい、談笑するのがハートのエースの常だ。
ジョーカーの俺には、体を伸ばしながらハイジが向かってきて、その後に続き、璃紅が来る。ハイジは腕を上に伸ばして俺の目の前にやってきた。
「っああ~~っ! よく寝たっ! やっぱ田島の授業は寝るに限るな!!」
「んな事ばっかりしてるから通知表見られて困るんだろが。バカハイジ」
「そんな事言うなよ!今から不安になるだろー!」
眉毛はほとんど無いし、ピアスも空けてる。容姿は小さい頃から大分変わってるけど、だからと言ってこいつ自身は全く変わっていない。
俺のハイジに対しての付き合い方も変わらないのは、そこからなんだろう。
「そういや璃紅も眠たそうにしてたよな?」
「……曲聞いてただけ。バカハイジとは違うよ」
素っ気なく返す璃紅も、全く変わっていない。
璃紅の親父さんがバンドが好きで、昔から音楽に触れてきた璃紅は音楽の申し子と言われる程に精通している。
その影響で、俺も少しはバンドに詳しかったり、ギターも弾けたりする。初心者のレベルは脱しただろうけど、未だに璃紅にはボロクソにダメ出しをされるぐらいだ。現状はギターソロでのリズムキープが今の課題だ。
その親父さんの影響なのか、璃紅はヘッドホンをほとんど手放さない。それが授業中でもだから、先生達はおろか、仲良くなろうとするクラスメート達も困り果てている。生まれつきの金髪である事から、
“禁忌の金(タブーゴールド)”
なんて二つ名もついている。これつけた奴中二かって。
「お前ら二人してバカバカ言うなよな! 俺だってやれば出来るんだからよ」
「なのにやらないハイジ君であった、と。それがバカなんだっつーの」
言葉を詰まらせているハイジに毎回優越感を感じるのは、俺に多少のSっ気があるからだと思う。冷静に分析しているのもバカな話ではあるけれど。
そんな馬鹿でも喧嘩は強い。元々スタミナ無限大みたいな奴に運動神経付けたら猿みたいになりやがった。そんなんだからコイツにも二つ名がある。
“荒天の灰(ラフグレー)”
……だから中二かって。
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