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―――
「…どこまでついて来るんですか」
「ついて行ってるんじゃなくて、家の方向同じなんだよ」
ギスギスした雰囲気の中、直君に腕を引かれるわたしの後ろを櫻井君がついて来る。
「なら、少し離れて歩いて下さいよ」
「…。まったく、とんだ邪魔が入ったぜ」
櫻井君はため息混じりに呟く。
「邪魔なのは貴方です」
「……」
ちらりと後ろを振り向き櫻井君を見ると、憮然とした表情で直君を見ている。
そう言えば、話したい事があると言っていた。
…今朝の事だろうか。
わたしも気になっていて、ちゃんと話をしておきたい。
「直君、あの…もうすぐ家だよね?先に帰っててくれるかな」
「…どうして?」
「二人で少し話したい事があって…」
「……」
直君は腕を掴んでいた手を離し、わたしを見る。
一瞬だけ、傷ついたように顔を曇らせるが、すぐに笑顔を向けて来る。
「分かった。帰って来たら家に来てくれる?」
「うん、行くよ。じゃあ後でね」
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