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「まゆちゃん?どうしたの?」
ここは直君の部屋。
直君は不思議そうにわたしの顔を眺めている。
「ううん…ごめん。ちょっと考え事」
とっさに笑顔を作るが、上手く笑えているか自信が無い。
「…櫻井さんの事?」
「!」
核心を突かれ、心臓がビクッと飛び跳ねる。
「まゆちゃん、櫻井さんの事好きなの?」
わたしを見る直君の表情は固く、機嫌が悪そうに見えた。
口調はきつく、まるでわたしを責めているかのように聞こえる。
「……」
わたしは答えられず俯く。
「どうして…答えられないの?」
「分からないから…」
考えたくない。
怖い。
好きだと言われた時、確かに感じた、恐怖とは違う胸の高揚感。
しかし、すぐに恐怖に飲み込まれ、急激に冷えていった。
こんなに簡単に人を好きになってはいけない。
彼の言葉を信じてはいけない。
だけど――
正面から想いをぶつけて来た櫻井君の顔が頭をよぎり…
胸の奥が締め付けられるような感覚に、窒息してしまいそうな錯覚を覚え、苦しくなる。
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