黒い猫は不吉の予兆

2/4
前へ
/29ページ
次へ
 この暑さの中、山の上に向かう者などいないに等しい。分かれ道を過ぎてから誰ともすれ違わない。  残り短い命を削り、絞り出して鳴く蝉。ただ子孫を残す為、一週間しか太陽の下に生きられないのに何年もじっと土の中で待ち続ける。騒々しいが、儚く物悲しく感じられる。  ずっと一人で歩き続けているので、柄にもないことを考えてしまう。  人の気配がないせいか進むにつれ、空気がひんやりとしているように感じられる。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加