あぶれた者はお狐様に縋る

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 「ここ2月ほど前から、山に一人で登った若い者が登ったっきり帰って来んらしいんじゃ。京都府警も捜索しておったが、なーんも手がかりが見つからんそうで。古くからこの土地に居る者はお狐様の神隠しじゃというんだが。お兄さんも気ぃつけてな」 そう告げると老婆は、水のペットボトルと油揚げを手渡してくれた。  「もし、お狐様の祟りにあったらこの油揚げをお供えするんじゃぞ。水はこの先売店はないから持ってきや」  俺は老婆に、お礼を言ってまた山道に戻り歩き出した。
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