君に降伏!―1―

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思えばいつもそうだった。 俺は何故か厄介事に巻き込まれやすく、必ずと言っていい程トラブルやら事件やらがつきまとった。 だが、その時いつも近くにいたのは―― 「今本さん、元気ないっすね。どうしたんですか?」 燦々と光が差し込む職場の休憩所でぐったりしていると、後輩の白石が笑いかけてきた。 渉は大学卒業後、近くの紳士服売り場に就職した。 元々接客業に就こうと思っていたし、服を見るのが好きだったという単純な理由だったが、今では可愛い後輩もできて順調な毎日を送っている。 「やぁ、白石ちゃん。元気がなさそうに見えるかな……?」 「はい、なんか目の下にクマできてますよ。寝不足ですか?」 「はは……まぁ、そんなとこだよ……」 人の良さそうな笑みを浮かべる白石の隣で渉が乾いた笑いを漏らす。 そして再び重いため息をついてテーブルに頬杖をつくと、窓の外へと視線をやった。    
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