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女と見間違えてしまいそうな顔立ちの棗は一度微笑むだけで周りを虜にしてしまう。
実際にこれまでに何人もの男が――いや、男女が棗に夢中になった。
だが騙されてはいけない。
手を後ろで組んで小首を傾げ、ちょこんと覗き込んでくる顔がどんなに可愛くても騙される訳にはいかない。
「帰れ」
そっけなく言って渉が玄関のドアを閉める。
だがドアが閉まろうとする寸前で、ガコンッと何かがぶつかるような音がした。
その音がした方へ視線を向けると、ドアと壁の隙間に棗の足がしっかりと挟まっていた。
それを見て渉が益々引きつった顔をすると、棗は華奢な体と可憐な顔立ちからは想像できない程の怪力でドアをこじ開けた。
「わたるくぅーん。久々に会ったお友達にその態度はないんじゃなーい?」
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