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そう思ったその時だった。
「白石君っ……!」
何を思ったのか、今まで傍観していた棗が白石の胸にぎゅっと抱きついた。
「なっ……棗さん!?」
いきなり抱きつかれて戸惑いを隠せない白石は、顔を一気に真っ赤にしてオロオロと意味もなく周りを見渡した。
すると、棗は澄んだ瞳からポロポロと涙を流しながら、痛々しい様子で白石を見つめた。
「あの人達に絡まれていた私をかばって渉君が助けてくれたの……っ!私、何も出来なくて……怖かった……っ…」
そう言いながら棗が白石の胸に顔をうずめる。
演技派女優も顔負けの演技。
だがさすがの白石も、これには演技だと気付くだろう。
「棗さん……」
そんな棗を見た白石は、神妙な顔で棗を見つめた後、いたわるようにそっと棗を抱きしめた。
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