1037人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
そんな中で、渉のポケットからピーピー、と携帯の着信音が響く。
むさ苦しい野郎共の声に紛れて、渉は携帯の通話ボタンを押した。
「……もしもし」
『もしもーし。あ、渉?俺だけどー』
聞こえてきた声に渉はしばし無言で停止した。
最近はオレオレ詐欺が流行ってるって言うしな……。
しかしあいにく詐欺に遭うほどの金は持っていないぞ。
『おい、聞いてんのかよ?』
「聞きたくありません」
電話の相手の問いかけに渉がキッパリと答える。
声の主は言わずと知れたアイツ――、風上 棗。
棗はどこか上機嫌な口調で電話ごしに笑った。
『昨日は色々と世話になったな』
「あ?なんだよ急に」
男の口調という事は、棗は今男の格好をしているのだろう。
だが棗は今どこにいるのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!