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晴れ渡った空の下。
棗はビルの屋上で手すりに寄りかかった状態で電話をしていた。
耳元からは彼の心地良い声が聞こえる。
これから自分が言うことに、彼は一体どんな顔をするだろう。
その反応を見るのが楽しくて仕方なくて、棗は彼につまらないちょっかいを出さずにはいられないのだ。
「別に。たださ、これからもっと世話になるから一応言っとこうと思って」
『はぁ?何の事だよ?』
渉の声にクスリと棗が微かに笑う。
その顔はどこか思わせぶりで、不敵に染まっていた。
風が棗の髪を柔らかく揺らし、棗は細い指で耳元の髪をかき上げた。
「おい、棗?」
そんな棗の様子に気付かずに渉が不思議そうな声を出す。
この時渉は忘れていた。
この男、風上 棗はトラブルを持ち込む爆弾のような人間だという事を。
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