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その人影は、たった今スポーツジムで汗を流して来ましたと言うような口振りで首をコキコキ動かしていた。
薄茶の髪に、遠くからでも見劣りしない肢体。
「な……っ、なっ……!」
その姿を見て、渉が顔をひきつらせる。
すると、その人物も渉の姿に気付いたのか、その整いすぎた顔を和らげてにっこりと微笑んだ。
「ただいま、渉」
「な…………棗………」
どうやらこれは夢じゃないらしい。
「なんでいちいちドアを壊して入って来るんだよ!!」
チュンチュンと鳥のさえずりが聞こえてくる。
渉はリビングのテーブルに座り、朝食の目玉焼きを食べながら棗に話しかけた。
目の前の席では渉と同じく棗が目玉焼きをつついている。
「だって鍵持ってないし」
「……………」
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