君に降伏!―プロローグ―

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我が物顔で部屋を歩く棗の後を生まれたてのヒヨコのように渉がついて回る。 「いいもんないわねー。あ、チオビタ発見。でも私ユンケル派なのよねー」 「別にお前の好みなんか聞いちゃいねーよ……」 渉の制止など耳に入っていないと言わんばかりの棗の行動に渉のツッコミが虚しく響く。 棗は目当てのジュースを取り出すとまるで自分の家にでもいるかのような足取りで渉のベットに腰掛けた。 もう追い返す気力もなくなった渉は自室の壁にもたれかかって棗を横目で見やった。 「お前さ、その格好、わざとだろ」 「え?」 ボソッと呟いた渉に棗がキョトンと顔を上げる。 そして赤いワンピースに身を包んだ自分の体を見下ろして、『あぁ』と思い出したような声を出した。    
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