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ふっ‥と空に手を伸ばす。
いつも見えているこの真っ青な空は、今にも届きそうなくらい近くに見えて、全然指先が掠りもしないほど実際は遠くにある。
当たり前なんだけど、絶対に届くはずがない空へ手を伸ばすのはもう、既に日課にまでなってしまった。
さわさわ髪を揺らす風に乗って、青空に浮かぶ雲が丁度、伸ばした手の先へ移動してくる。
雲を掴む‥なんてことも当たり前に出来はしない。
それでも掴もうと握った手はただ、宙をきるだけだった。
「…雲…うまそうだなぁ。」
ポツリと呟かれるお馬鹿な一言。すぐ後に鳴るのは腹の虫。
ぐぐぅ~きゅるる
「…腹、減ったなぁ…。」
雲が綿菓子に見えた、なんて云うお子ちゃま思考回路へツッコむ者は、残念ながらこの場にはいない。
あぁ~真上に見える太陽が眩しいよ…。つっても葉と葉の間から木漏れ日が差し込む程度だけど。
「ソイル~~!!」
ぼんやりとしたまま空を眺めていると、不意に真下から甲高い声が聞こえてきた。
それはもう、少し離れた木々で羽根を休めていた鳥達が一斉に飛び立っていくくらい大音量で。
だが呼ばれた当人はそれを眠気覚ましのようにして、意識を現実に引き戻した。
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