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「お、お兄ちゃんがナンパ!? オオカミの着ぐるみ着たって、結局木陰で息を荒げて女の子を見つめる事しか出来なかった、ヘタレ・オブ・ザ・イヤーのお兄ちゃんがナンパ……? 無理だよ! 出来るわけないよ!」
「ほっとけ! ともかく、俺は今からナンパに行ってくる! 独り身のお前は、寂しく布団でも噛んで、俺に彼女が出来るのを羨んでいるがいいさ」
そう言い放ちつつ、俺は着替えて部屋を出る。
美雨が何やら心配そうに俺を見ているが気にしない。
「……本当にナンパするの? お兄ちゃん馬鹿だから、何か危ないセールスとかに引っかかったら大変だよ? やめた方が良いんじゃないの?」
腕をグイグイ掴んで、なにやら必死に引き止めてくる美雨。
ははあ、こいつ、自分より先に俺に恋人が出来るんじゃないかって心配してるんだな?
「ククク。そう悔しがるな。すぐお前に、俺の彼女を紹介してやるよ」
「ばっ……馬鹿!! どうせお兄ちゃんに彼女なんて無理に決まってるもん!」
「ククク……言ってろ言ってろ。じゃあ、行ってくるぜ」
顔を真っ赤にして怒る美雨に別れを告げ、俺は玄関を出た。
「なによなによーっ! い――だっ!! もういいわよ! 好きにすればいいじゃん! でも、でも、夕飯までに帰って来なきゃ許さないからね! 朝帰りなんてしたらダメなんだからねっ! ねえ、聞いてるの!? お兄ちゃんっ!」
玄関で吠える美雨など完全にスルーして、俺は駅前に向かった。
……それにしても妹よ。
その格好で玄関先に立つな……。
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