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『秋月?キャストってのはどこまで嘘をつき通せるかだ、綺麗なら嘘でもいいんだ、お客さんは高い金払って夢見に来てんだからよ…そこに汚れた(けがれた)真実があってもな!綺麗な嘘をお前がつかせろ!』
日明がサブマネージャーに昇格して担当のキャストを持つという時に日吉が話してくれた。
まさに水商売にぴったりの言葉だ、キャバクラで彼氏が居ると言うキャストはいない、ましてや結婚してる、子供が居ると言うキャストもいない。
ようはいかに客を騙せるかなのだ。
日明はまさに今の自分にぴったりあてはまる言葉だと思った。
『俺は綺麗な嘘をつけるのかな…』
日明は自分に問いかけ、どうしようもない気持ちを持ちながらクリスタルに出勤した。
クリスタルでは出勤して、特にミーティングや何もなければ、そのまま幹部(サブマネージャー以上)は営業が始まるまでスカウトに出る。
この日も日明は新宿駅周辺にスカウトに出ていた。
もう雨はあがり、雲の隙間から夕日が射す。
缶コーヒーを飲みながら、美紀に出勤確認の電話をした。
「おはよう、昨日わゴメンね」
罪悪感を感じながら日明は言った。
「しょうがないじゃん、そのかわり今日、家行ってもいい?」
「ああ、いいよ」
日明は少し後ろめたさを感じながら答えた。
「ホント!今日もお仕事頑張れる!」
嬉しそうに美紀は言った。
『隣りで亜美が聞いてたらどうしよう…』
心配しながら日明は尋ねた。
「ひかるもちゃんと起きてる?」
「うん、今お風呂入ってる、あの子今日お昼に帰ってきて、かおりちゃん家に泊まってたらしんだけど、ホントかどうか…悪い男に騙されてなきゃいいんだけどね」
「そっか…遅刻しないように言っといて」
日明は胸が痛かった。
「わかった、じゃあ後でね!」
明るく美紀は電話をきった。
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