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シンジも露天風呂の湯に浸かり、外をじっと眺めていた。
眼前に広がるは諏訪湖だ。
冬には神が渡ると言われる湖だと知っていた。
そう言えば間欠泉が見られるのがこの諏訪湖では無かったか?
ただその様子はシンジが浸かる湯から見えなかった。
シンジは肩まで湯に浸かり、そのままふうと溜め息を吐いた。
その時先程見えた子どもが何か動きがおかしい事に気付いた。頻りに両腕を湯から出したりまた沈めたりしている。
シンジはそれに興味を持った。一体何をしているんだ?
シンジは思わずそれを見てぎょっとした。
子どもの手にはヤモリが掴まれていた。その子どもはヤモリを湯に無理矢理沈め、そして出す事を繰り返していたのだ。無邪気な遊びでは済まないレベルだ。命への冒涜だった。
それからシンジの行動は早かった。シンジはその男の子の手からヤモリを奪い取った。
「何すんだよ!?」
少年が抗議するが、シンジはそれを無視し、ぐったりと弱っているヤモリを見た。まだ呼吸はしている。
シンジは猛抗議する少年を無視し、湯から出ると、そのまま露天風呂の外に向かいヤモリを投げた。
その子どもはそんなシンジを見て、泣き出してしまった。それで他の客達も一斉にシンジの方を見る。五名の眼が一斉にシンジに敵視の視線を送って来た。
シンジは訳が分からなかった。
悪いのはシンジでは無い。そう主張したかった。
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