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男は広いエントランスを後にすると、警備員に必要以上ににこやかに会釈しながらそのビルを出た。
そして振り返り、ビル壁面に吊り下げられたVRE‐バイオ・ロボティック・エンタープライズ社‐のロゴを睨み付ける。
「……」
先程の軽い青年とは全く別人と思えるような無表情なその顔は恐いと言っても過言ではない。
そんな青年にちょこちょこと付いて行くアンドロイドは、プログラムによって作り笑顔を保ち、こちらのほうが人間らしくも見えた。
「乗れ」
表で停車させてあった黒い車両は、主人の到着を感知するとドアを開けて迎えた。
「はい」
なんだもう一人いたのか、と、後部座席のドアも開く。
一人と一体を乗せた車両は、軽いエンジン音を立てて、緩やかに離陸した。
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