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思いっ切り扉を開いた。
それこそ私の感情をぶつけるかのように。
でも、次に私を襲ったのは衝撃。
「沢井……さん?」
教室の窓側の隅。自分の席で、沈んでいく太陽を背に驚いた表情でこちらを見る。
その頬には夕陽に照らされる雫が流れていた。
すぐに私から顔を背けて、制服の裾で目をこする。
「どっ、どうしたの?忘れ物……とか?」
そう言って、いつもの笑顔。絵に書いたように爽やかな。
でも、今は動揺からか悲しさが見え隠れしている。
「あんた……バカねぇ」
「えっ?」
私は考えるより先に足を動かしていた。そして、慶太の前に来て頭に手を置く。
自分でも何であんな事を言ったのか分からない。気付かないフリをして帰ればいいのに。
きっと、私は根っからの世話焼きなのだろう。
「泣きたいときは、思いっ切り泣けばいいの。それは、恥ずかしい事じゃないわ」
「……さわ…い…さ……」
譫言のように私の名前を呼ぼうとするが、すぐに涙が大きな丸い瞳から流れ落ちてそれを邪魔する。
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