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冬が来て肌寒さを感じるようになると、私の気持ちも比例するかのように冷めていった。
慶太が嫌いな訳じゃない。
ただ、自分が嫌い。
慶太の側にいると、自分が卑しく思えて辛かった。
……その真っ直ぐな笑顔が辛かった。
「……慶太」
いつもの帰り道、並木道で私は立ち止まった。
顔を伏せて、ある決意を胸に秘めて……。
「ん?どうしたの?明日香」
優しい笑顔で振り返る。やっぱり胸がときめく。
でも……駄目なんだ。
「別れましょ」
慶太の顔が驚きで固まる。少しの静寂の後、冬の風が二人を割くように吹き荒れた。
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