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「どうして……?」
「あら、今日はお祭りよ。来ちゃいけないなんてことは無いわ」
気持ちを見透かされないように、わざととげとげしく言ってみる。
「ふふっ、そうだね。隣……いいかな?」
「ご勝手に」
相変わらずなよなよした奴。
いっつも笑って、怒ってる所なんて見たこと無い。
悲しい顔は……二度。
「……髪、染めたんだね」
慶太の方を見ずに、川を見て言う。見ちゃったら……揺らぎそうだから。
「うん。僕ね、明日香に『茶髪が似合うんじゃない?』って言われてから、卒業したら染めようって決めてたんだ」
今時、大学生にもなっていまだ僕っ子。
マザコンとか、箱入り息子……なんて言葉がピッタリだ。
「バカねぇあんた。もう私達はそういう関係じゃ無いのよ」
「あっ、うん……そう……だね。ごめん」
横目でチラリと見たその笑顔が、一瞬だけ曇ったように見えた。
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