夏の奇跡

4/17
前へ
/17ページ
次へ
「どうして……?」 「あら、今日はお祭りよ。来ちゃいけないなんてことは無いわ」 気持ちを見透かされないように、わざととげとげしく言ってみる。 「ふふっ、そうだね。隣……いいかな?」 「ご勝手に」 相変わらずなよなよした奴。 いっつも笑って、怒ってる所なんて見たこと無い。 悲しい顔は……二度。 「……髪、染めたんだね」 慶太の方を見ずに、川を見て言う。見ちゃったら……揺らぎそうだから。 「うん。僕ね、明日香に『茶髪が似合うんじゃない?』って言われてから、卒業したら染めようって決めてたんだ」 今時、大学生にもなっていまだ僕っ子。 マザコンとか、箱入り息子……なんて言葉がピッタリだ。 「バカねぇあんた。もう私達はそういう関係じゃ無いのよ」 「あっ、うん……そう……だね。ごめん」 横目でチラリと見たその笑顔が、一瞬だけ曇ったように見えた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

293人が本棚に入れています
本棚に追加