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「で、何であんたはここに来たの?」
花火の始まりが近いのだろうか、辺りには更に人が集まってきていた。
でも、私と慶太の間には相変わらずの重い空気。
……まぁ、原因は八割は私だけどね。
「えっと……そうだね……」
表情は笑顔だが、内心はかなり焦っている。私には分かる。
――馬鹿な奴……
いつの間にか、吸い込まれるようにその顔を見つめていた。
私のタイプは、年上でいつでも頼れる男らしい男。
……そう思っていた。
なのにこいつが、私の初恋。
今時遅すぎる高三での初恋。
三年間同じクラスで、自ら目立つタイプじゃなかった。
でも、ドジで、天然で、いつの間にかみんなに可愛がられている。
そんな奴。
はっきり言って嫌いだった。
どんな失敗をしてもヘラヘラして、体育祭でもあんたが転けたせいでうちのクラスは負けた。
でも、あんたは笑って、みんなも笑って許した。
馬鹿じゃないの!?もう、許さない!
忘れ物を取りに帰るふりをして、教室に帰った。
今日という今日は許さない。ガツンと言ってやる。
そう思って教室の前に来た。
あんたがいつも最後まで残っているのは知っていた。
どんなに誘っても一緒には帰らない。
男子がそんな事を言っていたから。
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