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こいつはいつもそうだったんだろう。
辛くても、苦しくても、笑って。
それが自分の役目と言わんばかりに。
そして、一人の教室でその日全ての感情をさらけ出す。
大粒の涙として。
誰にも悟られることなく。
そして、次の日にはまた笑顔。
私はこの時気付いた。
こいつは世渡り上手なんかじゃない。
こいつもまた、私とおんなじ不器用な人間。
私は感情を素直にだすのが苦手だった。
自分をさらけ出すのが怖くて。
みんなに認めて貰えるか心配で。
だから、冷たい奴なんてよく言われる。
こいつは笑う事しか出来なかった。
怒ったり、泣いたりしたら嫌われる。そうやって、怯えながら過ごしていたんだ。
笑顔という仮面をかぶりながら……。
そう、表面は違えど中は同じ。
私とこいつはよく似ていた。
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