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それから、少しずつ慶太と話すようになった。
慶太も私と話すときは笑顔の仮面ではなく、本当の笑顔でいてくれるようになっていた。
無論、その微妙な変化に気付けるのは私だけだった。
そうして、一年前の夏。
初めて慶太と二人でここのお祭りに遊びに行った。
あの時はちゃんと浴衣を着て、おめかししていたなぁ。
そして、慶太の気持ちをぶつけられた。
そう、ちょうどこの辺り。
綺麗な花火の打ち上げられる河原で。
始めて見る、真っ直ぐで真剣な表情で。
告白されるのが初めてだった訳じゃ無い。
自分で言うのも何だけど、意外とモテる。好きな人がいなかったから付き合った事は無いけど。
今回も断ろう。そう思ったけど……。
純真な瞳が私の胸をときめかせた。
初めての感情に耐えれなくなって花火に視線を逸らす。
あの時の私は、夏の暑さに、祭りの熱気に、花火の美しさにおかしくなっていたのかも知れない。
いつの間にか、頷いていた。
顔が火照って、真っ直ぐ前を見れない。
けど、そんな私を慶太は優しく包んでくれた。
そして、耳元で『好き』ともう一度囁いてくれた。
はっきり言って幸せだった。
でも……歯車は少しづつ食い違っていった。
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