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我輩は猫である。
名前はまだない。
御主人様の膝の上。
ぬくぬくとした暖炉の前。
私はいつも御主人様の朗読の声を子守唄にしていた。
何度も何度も朗読される本。
御主人様は日本にとても興味があるらしい。
部屋にあるのは日本の文学作品ばかりだった。
きらびやかで手入れの行き届いたインテリアとは違って、古びて日焼けして、所々破れているような本ばかりが並んでいた。
もちろん猫の私に本のタイトルを読むことなんて出来はしなかったが…。
あるとき御主人様の部屋を覗いたお父様が
「お前は本当に日本が好きなんだな」
と御主人様の頭を撫でているのを見た。
「そうだよ!日本は素晴らしいんだ!だからこいつにはノゾミって名前をつけたんだよ!」
そう応えながら嬉々として私を抱き上げた御主人様。
「そうかそうか、ノゾミにも日本のお話をしてあげると良い。」
お父様は微笑んで私の目を見た…ような気がしただけかもしれない。
私は日本というところにとても興味があった。
だから聞きたいの意志を込めてニャァと一鳴き。
それで伝わったようだ。
御主人様は私に頬擦りしながら言った。
「面白いはなしをたっくさん聞かせてあげるからね」
それから毎晩の朗読会が始まった。
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