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私はあの話が1番好きだった。
人間のくせに私達猫の立場で物語を書くとは…。
嬉しくって嬉しくって。
その話のときだけは寝ることを忘れて最後まで聞いていたものだ。
御主人様も私が喜んでいることに気付いた様子で何度も何度もその本を選んだ。
話終えるたびに私を撫でながら優しく聞いた。
「ノゾミもこの話好きだろう?僕も好きなんだよ!ノゾミとおんなじ猫の話…ねぇ、ノゾミも色々考えてるの?」
御主人様の優しい問い掛け。
私は御主人様の言葉は理解出来ても同じ言葉は使えない。
それでもニャァと鳴いてペロリと御主人様の頬を舐めれば思いは伝わる様で。
「そうかそうか。ノゾミもやっぱり僕の言葉を理解しているんだよね。」
嬉しそうに笑った御主人様。
もう一度ニャァと元気良く鳴いた。
気持ちが伝わって嬉しいです、と。
「さぁ、もう遅い…どうする?ノゾミ、僕と寝るかい?」
ふぁと大きな口を開けて欠伸を一つ。
私もつられて欠伸を。
「クスッ……さ、寝よう。」
書見台のライトを消してベットへ私を抱えたまま潜り込んだ。
普段、私は御主人様のベット下の毛布に包まって寝ている。
だけどたまにこうして御主人様と一緒。
本当は毎日でもこうして寝て欲しいのだけど、私が寝たあとは毛が凄いとメイドが愚痴っているのを聞いて控えようと思った。
御主人様に抱きしめられ、御主人様の匂いに包まれて。
とても暖かい。
ここは楽園のよう。
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