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人の少ない通りまで出ると御主人様は私をそっと降ろした。
「存分に走り回っていいからね」
優しく頭を撫でてくれた。
チリンチリン一
どこからか聞こえて来た鈴の音。
キョロキョロと辺りを見回す。
「露店だね、見に行こう!」
御主人様の指差した方へ向かう。
そこに居たのは人の良さそうな少女。
柔らかな香りがした。
「へぇ、これは可愛い。ノゾミ、見てごらん」
御主人様は屈んでシートの上に広げられたアクセサリーを眺めていらした。
私もそれを覗き込む。
「あら、可愛い猫ちゃんね」
黙って私達の様子を見ていた少女も屈んで私達に話しかけた。
私を撫でようとしているのだろう白い綺麗な手がすっとのびてきた。
「ノゾミって言うんだ。僕の言葉を理解出来るんだよ!」
自慢げに私のことを話す御主人様。
避けてはいけない気がして大人しく少女に撫でられることにした。
「そう、いい子なのねノゾミ」
少女の可愛らしい声で紡がれる私の名前。
御主人様の声とどことなく響きが似ていた。
「ねぇ、これ、買わない?」
少女はペアのネックレスを御主人様に差し出した。
長いものと短いもの。
トップはシンプルな大小の十字架。
よく見ると短いほうのネックレスは普通のチェーンではなく太い糸のようなもので出来ている。
「これならノゾミとお揃いでつけられるわよ。」
「お揃い……ノゾミ!お揃いだって!欲しい?」
興奮した様子で私に問い掛ける御主人様。
決まっている、答えは一つ。
「ニャァ!!」
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