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私達は無事に雨の降り出す前に屋敷に戻ることができた。
間一髪、それはまさにこのことを言うのでしょう。
御主人様が厚い扉を開け足を踏み入れようとしたその瞬間。
ゴロゴロと遠くで聞こえた雷鳴。
それを合図にザァッと降り出した雨。
「ノゾミ、すごいすごい!もう少しで僕達、ずぶ濡れになっちゃうところだったよ!」
私を抱き上げはしゃぐ御主人様。
「ありがとう、ノゾミのおかげだよ!美味しいおやつをあげるね!」
御主人様は私をギュッと抱きしめました。
言葉よりもおやつよりも、それが私への最高のご褒美で。
御主人様はわかってらっしゃるのでしょうか。
「セバスチャン、おやつの用意だ!僕の分もね!」
私達の帰宅の音を聞いた執事が奥の部屋から出てきた。
そこにすかさず御主人様の声が響く。
「畏まりました、坊ちゃま」
深々と頭を下げると執事はキッチンへ向かった。
「さぁ、今日のおやつは何かな」
私を撫でながらニコニコして呟いた。
プリンだと良いですね。
御主人様はプリンが大好きだから。
私も一度プリンを食べてみたいのですが…。
「坊ちゃま、ご用意が出来ました。」
「ありがとう」
「あっ……お待ちください!」
食堂に入ろうとしたら止められてしまった。
何故でしょうか?
御主人様の方を見上げれば御主人様は分かっているようで。
「その前に手洗い……だね」
深く頷いた執事。
御主人様は超能力が使える様です。
どうして言われなくてもわかるのでしょう。
そういえば私の気持ちもわかってくれます。
御主人様はやっぱり凄い人です。
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