第一章-月の詩-

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私達は無事に雨の降り出す前に屋敷に戻ることができた。 間一髪、それはまさにこのことを言うのでしょう。 御主人様が厚い扉を開け足を踏み入れようとしたその瞬間。 ゴロゴロと遠くで聞こえた雷鳴。 それを合図にザァッと降り出した雨。 「ノゾミ、すごいすごい!もう少しで僕達、ずぶ濡れになっちゃうところだったよ!」 私を抱き上げはしゃぐ御主人様。 「ありがとう、ノゾミのおかげだよ!美味しいおやつをあげるね!」 御主人様は私をギュッと抱きしめました。 言葉よりもおやつよりも、それが私への最高のご褒美で。 御主人様はわかってらっしゃるのでしょうか。 「セバスチャン、おやつの用意だ!僕の分もね!」 私達の帰宅の音を聞いた執事が奥の部屋から出てきた。 そこにすかさず御主人様の声が響く。 「畏まりました、坊ちゃま」 深々と頭を下げると執事はキッチンへ向かった。 「さぁ、今日のおやつは何かな」 私を撫でながらニコニコして呟いた。 プリンだと良いですね。 御主人様はプリンが大好きだから。 私も一度プリンを食べてみたいのですが…。 「坊ちゃま、ご用意が出来ました。」 「ありがとう」 「あっ……お待ちください!」 食堂に入ろうとしたら止められてしまった。 何故でしょうか? 御主人様の方を見上げれば御主人様は分かっているようで。 「その前に手洗い……だね」 深く頷いた執事。 御主人様は超能力が使える様です。 どうして言われなくてもわかるのでしょう。 そういえば私の気持ちもわかってくれます。 御主人様はやっぱり凄い人です。
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