裕福特急

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ガタンゴトン、ガタンゴトン。 生い茂る木々や建ち並ぶ家々、金色に輝く小麦畑が車窓というシャッターフレームの中を流れるように次々と姿を現しては消え行く。   ここは裕福特急『リッチ』。 この列車の中ではより裕福な者が、より似つかわしい席を手に入れることができる。   「ノーベル、ノーベル。間もなくノーベルへ到着致します」   車掌のなんともご丁寧な口調のアナウンスが流れ、列車は比較的静かにホームへ止まった。 車窓からホームを眺めているといかにも金持ちそうな恰幅のよい男が執事を連れて待っていた。 どうやらこの車両に乗るらしい。 ずかずかと乗り込んだ男は、裕福さで負けて立ち乗りを余儀なくされたブルジョア達を押しのけるように奥の個室へと向かう。   この列車では最も裕福な者が個室、次に裕福な者は相席、裕福さで劣った者は立ち乗りをするというルールがあり、より裕福な者は相手を席から退かすために札束を相手へ渡し、自分の財力を見せ付けるのである。
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