世界の謂れ

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その言葉が作戦開始の合図となった。 霞は大地を蹴ると同時に背中のスラスターを吹かし、敵陣へと跳んだ。 完全に空を飛ぶということはせず、地面すれすれを低空飛行。対空火砲の的にならないためには低空飛行で飛ぶのが一番いい。 ここから敵陣中央まで約十二キロ。 自分のスピードなら三分あれば着くだろう。と霞は予測した。 途中、背後からは爆音が響く。知らないうちにいくつか地雷を踏んでいたらしい。誰もいない平地で虚しく爆音が響いている。 向こうは向こうでようやくこの異変に気づいたのか、半分ほど進んだ所で遅すぎる熱烈な砲弾での歓迎会。打ち出される弾の数は一秒間に約二百。 しかし、そのどれもが霞の速さに付いていくことが出来ず、後方で着弾、爆発していく。 敵陣中央まで残り八キロ。 今頃向こうは警報のサイレンが鳴り、敵がすぐそこまで来ていることを知らせているだろう。 「……トロい」 右手に意識を集中。メキメキと面妖な音を起て、右手がその姿を変えていく。 出来上がったのは長い銃身だった。それは、作戦開始前に霞が丸呑みしたあのパーツとよく形が似ていた。 霞はその長い銃身に電気を走らせ、射出。電気エネルギーを磁器圧力に変換し、光速に近い速さで射出された弾丸は、いともたやすく鉄鋼を貫く。 ―――レールガン。 連発は出来ないが、十分な破壊力を持つそれは、ここで使うには勿体ない気がした。
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