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放課後――
凛は秀二に一緒に帰らないかと誘いに行ったが「病院に行くから」と言って断られてしまった。
こればっかりは仕方がないなと思い、諦めて一人で帰ることにした。
「やぁ凛。僕でよければ一緒に帰ろうじゃないか♪」
「よろしくないから近寄らないで」
「ん~、恥ずかしがってちゃあいけないなぁ……。もっと自分に素直に――」
ゴキン
自分に素直になった結果、傑は泡を吹いてその場に倒れた。
「――ただいま」
傑を残して帰ってきた凛。
返事が返ってこないところをみると、親は出掛けているようだ。
出掛けていると言ってもそれは今日に限った話しではない。
凛の父親は仕事であまり家に帰らない。母親は手芸だの書道だのこれからの人生を楽しむための教室に片っ端から参加しているため、夜になるまで帰ってこない。
~~♪
リビングから音がする。どうやらテレビが点いたままのようだ。
「まったく……。お母さんったらまたテレビ点けっぱなしで――」
テレビを消そうとリモコンを捜していると、見覚えのある光景が映った。
「――次のニュースです。今日未明、開北病院の医師、三神 正和さん(41)が病院の一室で遺体となって発見されました。遺体には争った跡があり、警察は何者かに殺害されたものとみて―――」
そこに映っていたのは、凛の知っている建物、二週間前に私に「大丈夫ですよ」と言ってくれた人だった。
「―――この人。秀二の、先生だ」
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