世界の謂れ

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若い男がリュック片手に笑顔のまま直立不動。クールというかなんというか、微妙に幼さが残っている。まだ未成年だろうと中尉は予想した。 重いため息を一つ。 それを見た若者はむっと顔をしかめ、リュックの中から一枚の便箋を取り出し、中尉に突き付ける。"読め"ということだろう。渋々便箋を受け取り、目玉が飛び出るかと思った。 便箋はただの手紙ではなかった。 もちろん無料のただということではないので要注意。 暗号通信でもなんでもないこれは、皇后様実筆の、戦闘許可書。 世界各国と結んだ条例に違反するほど強力な兵器、もしくは作戦を実行する場合にこれが必ず必要になってくる。 つまり、この紙が書かれたということは、その兵器、日本の切り札が使用されるということ。 「さぁ~て。後は俺が何とかするんで、皆さんはテキトーにくつろいでていいですよん♪」 軽い口調。笑顔に見えない笑顔。 なぜか背筋が冷たい。何か得体の知れないものを感じる。 「アンタは一体」 なんなんだ? 中尉がそう言うと、彼は目を丸くし、 「そっか、自己紹介がまだだったね!」 リュックを地面に降ろし、握手を求めくる。 「私は草薙。階級は中尉だ。この部隊の隊長を勤めている」 「ヨロシク♪  俺は霞 慎也(カスミ シンヤ)。部隊は第最終番隊――だったかな? 長かったから覚えてねぇや」 「最終番隊?  ――そうか、貴様が噂の……」 "第最終番隊" 彼らが出た戦は必ず勝利に終わるという凄まじい記録が残っている。 それと同時に敵兵生存者数がゼロという驚異的な記録もある。 それゆえ、悪魔の部隊とも呼ばれている。 こんな少年があの悪魔? 世の中ふざけてる。
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