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傑は自分の部屋で雑誌を読んでいた。"月刊単車の心得"である。単車を扱う傑には必要な知識と情報が詰まっている。辞書みたいなものかなと思う。
と、携帯が鳴る。これは電話のほうの着メロだな、と携帯のディスプレイを確認。電話をかけてきたのは、――凛だ。
「はいハニー♪僕の声が聞きたくなるなんて君も――」
「今すぐ私の家に来てくれない?行きたい所があるの」
傑の戯れ事をなかったことのようにして淡々と話す凛。
よく耳を澄ませば彼女の声は微妙に震えてるのが聞き取れた。
「行きたい所?そこって遠いのか?」
「少し――ね」
傑は凛の微妙な変化に気付いた。
「――何か、あったのか?」
「……うん。でも、本当かどうか、分からないから」
確かめたい。そう言いたいのだろう。
だが、凛の口からはその言葉がでない。
きっと、怖いのだろう。
「分かった。少し待っててくれ」
ブツリと電話を切られる。
「毎度毎度、このきつい切り方は改めてほしいもんだ」
と誰もいないところでポツリと呟き、急いで支度をして凛の家へ向かった。
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