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しばしの沈黙。
凛の考えを知ってしまった傑は何を言っていいのか分からず困惑していた。
「~~~~~ッ!!」
何か言いたい。
しかし、言葉に出来ない。
もどかしかった。
頭の中で言いたいことを整理し、考えていると
「何かご用かい?」
一人の男が声をかけてきた。男は青い制服に身を包み、青い帽子を深々と被っていた。
どうやら出入口に立っていた警官の一人が何かあったと思い、近づいてきたようだ。
「いや、特に用はないんだけど―――」
「私の弟がここの先生にお世話になったんです!!でも、今日のニュースで亡くなったことを聞いて…、そ、それで先生のお顔を見に―――」
「あぁ。三神さんの患者さんか。あの人はいい人だったよ…。けど、悪いけど顔を見ることは出来ないよ。警察が先生の遺体を調べているからね」
「そ、そんな…。じ、じゃあ、せめてどんな風に亡くなったのか教え下さい!!そうじゃないと私…、私…」
凛の演技は完璧だった。横から見ていた傑ですら息を飲むほど優れていた。
しかし、傑は一つ疑問に思うことがあった。
(弟って誰だ?)
「う~ん…。しょうがないねぇ。あまり詳しくは教えてあげられないけど…、『直接』の死因は絞殺なんだな」
「『直接』、ということは、他にも何かあったんですか?」
「ん?あぁ…」
警官はキョロキョロと辺りを見回し、誰も聞いていないことを確認すると、小声で話し始めた。
「あまり大きな声で言えないけど…、被害者の遺体には、不審な点がいくつかあるんだなこれが…」
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