世界に穿つ、ただ一つだけの祈り方

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「不審な点―――ですか」 傑は眉をひそめていた。聞いてはいけない。そう言いたげな顔をしている。 だが、警官はのんびりとした口調でかまわず喋り続ける。 「うん。まず一つ目は、所々にあった焼け焦げた跡かな。焦げ跡の鑑定がまだだからはっきりしないけど、どうやらライターみたいな火を使う物の類ではないそうなんだな」 火の類ではないのに焦げた跡? 二人には意味が分からなかった、というより考えることが出来なかった。 この警官の話を聞くのが精一杯で…。 「二つ目。被害者の体には刃物で切りつけられたような鋭い傷があるんだけど…、どうやらその傷は死後につけられたものらしいんだな」 二人は絶句した。 あの先生が、あんなにいい人だったのに、そんなにも無惨な死に方をしたのか……。 考えるだけで、胃の中身が逆流しそうになった。 「そして三つ目。今回の事件で一番不審なんだけど…。被害者の血液が足りないんだよ」 「――え、でも刃物で切りつけられてたんですよね?だったら、そのときに血が一杯でたんじゃ―――?」 「最初は我々もそう考えたさ。でもね、床に散乱した血液と遺体の体に残っていた血液を合わせても、通常の三分の一にも満たないそうなんだな。まったく、吸血鬼じゃあるまいし、惨いことをするねぇ」 これ以上は聞くに堪えない。 もう、心が持たない。 これ以上聞くなと脳が悲鳴をあげて拒んでいる。 「―――あ、ありがとうございます…」 凛の声は震えていた。でも、演技は止めなかった。 「うん。怖い話をしてごめんね。そちらは弟さんかな?気をつけて帰るんだよ」 警官はそう言って、その場を立ち去った。 二人の間には、また長い沈黙。 あまりにも恐ろしい出来事。それが思考を鈍らせた。 長い時間の末、二人は一つの疑問を感じた。あの先生を殺したのは、本当に自分と同じ"人間"なのか―――と。
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