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あの話は本当に聞くべきだったのか。聞かなかったほうがよかったのではないかと思うほど後味の悪いものだった。
まともな人間の仕業かどうかすらも疑わしいこの事件。
これを聞いてもなお、凛は秀二を疑っているのか?
「……凛」
長い沈黙の末、傑が口を開く。凛はビクッと体を震わせ、何?と聞き返した。
「今の話……聞いたよな?」
なぜ確認をとる必要があるのだろう。一緒に話を聞いていたのだから、彼女は聞いているはずだ。――でも、今の彼女なら、聞いていない。そう言いそうだった。
だから確認をとった。彼女の逃げ道を無くすために。
「傑はどう思う今の話。どこからが本当で、どこからが嘘なのか分かる?」
「……嘘なんてないと思う」
「――どうして?どうしてそう思うのよ!?」
「嘘をつく意味がないからだ」
これが傑の出した解答。そして、それと同時に凛の逃げ道を奪う壁となった。
逃げるな――。
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