3.高級マンションにて

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「―――で、何処から片付けましょう?」  乱雑とした部屋の一体何から手をつけるべきか。自分にも分からない……。 「そうねぇ……。私に任せてくれるならどうにかするけど……」  雪弥の頭の中には予想図があるらしい。  それなら自分は大人しく彼女に任せるまでだ。 「では、掃除は雪弥にお願いしましょう。僕は…………少しだけ仕事をさせていただけますか?」  サボったのは胸が痛い。せめて、やれるだけの事をやれればそれが本望だ。 「良いけど……好き勝手やっちゃうよ?」 「構いません。ご自由にどうぞ」  許可をもらった雪弥はそれなら、と腕まくりをした。  現れた雪弥の白い腕にときめいてしまう。両腕共に日焼けのあとが見られなかった。 「僕は……そこのソファーに座ってます……。終わったら教えて下さい……」  動悸を抑えながら薄型ノートパソコンを開くとやりかけの仕事が残っていた。 「あー……しまった……」  やりたくなくて放棄していたデータ処理。  いざ、目の前にすると激しくやる気が低下する。  それに比べて雪弥は実に楽しそうだった。  ものの数分で足の踏み場が無かった場所にぽっかり空間が生まれる。
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