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「大人しくしろってっ」
「しーてーるぅー」
ソファーでうずくまる雪弥は夜中の2時過ぎに蓮の怒鳴り声を聞いた。荒い口調をしている、と言う事は頭の線がぷっつりと切れているらしい。
「いい加減にしろーっ!」
「うっ……」
「だから言ったろうにっ!」
部屋はお酒臭い。テーブルには空き缶が山ほど積み上げられていた。
揉め事は台所から聞こえて来た。かなり五月蝿いのにも関わらず雪弥の眠るソファーの下ではさっき知り合ったばかりの男が安らかな寝息を立てていた。
「吐きそう……けど、吐けない……」
「馬鹿っ! 未成年が酒飲むからそうなるんだっ」
蓮は半ギレモードを継続したまま当たり前の事で叱責をする。
しかし、相手はのらりくらりとした気の抜けるような対応を繰り返す揚句に嫌な言葉を連呼する。
「吐き……そう……」
雪弥はけだるい身を起こして明かりの煌々と灯る所へと視線を向けた。
ガチャガチャ、とグラスやスプーンが擦れ合う音がしたからだ。
音が止むと静止していた蓮の影が暴れる彼女に向かって動いた。
「んっ……」
雪弥はわざとそれを見ていない振りをした。
だって、蓮が―――キスをしていたから……。
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