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どうしてこんな物を見る羽目になったのかはある程度時間を遡る必要がある。
―――8時間前の事
「今日、客が来ます」
帰って来た蓮はスーツを脱ぎ捨てるなり部屋をぐるぐる回る。
慌てているのか、怯えているのか引っ切り無しにリビングを歩き続けた。
雪弥は怪訝な顔をしつつもとりあえずはスーツを拾った。ついでに投げ捨てられたネクタイも拾ってハンガーへ掛ける。
そういえば、雪弥が此処に来てから誰かが訪問して来た事は無い。
雪弥は蓮が何をしたいのかを知りたいが話す気が起こるまでは放って置くという方針を固めた。
「今日はカレーライスだよ。沢山あるから」
「カレー? それは嬉しいです。僕、大好きなんですよ」
「それは良かった」
「沢山なら何か買わなくても良いですね。飲み物もあるし、うん。あ、ただいま」
「おかえり」
最近、雪弥は蓮のペースに慣れて来た。前よりも対応が上手くなった気がする。
突如言い出すつじつまの合わない台詞にも合わせられるようになった。
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