11.禁断のキスにて

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「なぁ、雪弥はさぁ」  礼美はスプーンに乗せたカレーを口に運ぶ前に難しい顔をしていた。 「何ですか?」 「なんで、こんなしょーもない仕事馬鹿を伴侶に選んだ訳?」 「しょーもなくて悪かったですね……」  静かに優雅な雰囲気で食事をする蓮の睨みを礼美は軽くあしらった。 「……出会ったからです」 「出会った?」 「はい……。私には蓮さんは―――光だったんです……」  雪弥は皿に目を落としてなるべく相応しい言葉を探して口に出す。 「……蓮さんと初めて出会った時、私は本当は死ぬつもりでした……」  雪弥はそれくらいにあの時は思い詰めていた。  毎日が辛くて、逃げ出したくて堪らなかった。 「でも……犬が溺れていて……必死にもがく姿に自分がしようとしている事の愚かさに気付いて思い留まったんです。その時に血相を変えた蓮さんが私を見付けてくれました。この手を、苦しくて逃げたしたくて馬鹿な事をしようとしていた私の手を取ってくれました……。だから“出会った”んです……っ?!」  陸がだーだー滝のような涙の筋を流して雪弥を凝視していた。  袖で涙を拭っていたがそれでも涙の生産量の方が早い。 「礼美と同い年なのにっ……苦労してるんすね。これからは幸せになれるっすよ、きっと……」 「“なれる”のではありません。“なる”んですよ、絶対に」  蓮は頭を撫でてくれた。雪弥がそれを好きなのを知っているからだ。 「こんなんでも男だからうんと頼りな? 金と地位と馬鹿みたいに優しさで構成されてる奴だからさ。困ったらあたしの所に来なよね。蓮の弱点、教えてやるから」  礼美が蓮とどのような関係なのかはとても気になる。  でも、礼美は人を裏切るような事をするような人ではない。笑顔がそう教えてくれた。 「そのときは是非」 「ん、了解」  本物の笑顔を見た時、礼美は蓮とはただの上司と部下関係だ、と疑わなかった。  だけど、何?  自分達が寝ている間にいとも簡単に裏切るの?  
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