11.禁断のキスにて

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「っ離せ!」  礼美が蓮を突き飛ばして涙目で走り去って行く。  一連の動作がとてもゆっくりに見えた。 「全く……。人の好意を……」  蓮は少し不満げに眉の間に皺を寄せる。  コップを漱ぐ為に方向転換をした際に雪弥と目が合う。 「な、何してたの……?」  雪弥は自分の声が震えたのが分かった。 「何って……馬鹿な礼美の手助けですよ?」 「キス……してた?」 「キス? あぁ、そう見えましたか……」  蓮は髪を掻き上げて苦笑を漏らした。  雪弥の怪訝そうな、むしろ怒りの篭った瞳を軽く受け流す。 「あんなのキスなんかではありません。そんな事をいちいち言ってたらキリがありませんよ? 最低でも……12年は一緒に暮らして、1年に何回もしてますからね、口移し」  キスにしろ口移しにしろ唇が触れる。雪弥にはそれが嫌なのだ。 「やだ……」  それを一旦口に出すと泣けてくる。 「他の人にキスとかやだ……。蓮さんは私の物なのに……」  
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