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「っ離せ!」
礼美が蓮を突き飛ばして涙目で走り去って行く。
一連の動作がとてもゆっくりに見えた。
「全く……。人の好意を……」
蓮は少し不満げに眉の間に皺を寄せる。
コップを漱ぐ為に方向転換をした際に雪弥と目が合う。
「な、何してたの……?」
雪弥は自分の声が震えたのが分かった。
「何って……馬鹿な礼美の手助けですよ?」
「キス……してた?」
「キス? あぁ、そう見えましたか……」
蓮は髪を掻き上げて苦笑を漏らした。
雪弥の怪訝そうな、むしろ怒りの篭った瞳を軽く受け流す。
「あんなのキスなんかではありません。そんな事をいちいち言ってたらキリがありませんよ? 最低でも……12年は一緒に暮らして、1年に何回もしてますからね、口移し」
キスにしろ口移しにしろ唇が触れる。雪弥にはそれが嫌なのだ。
「やだ……」
それを一旦口に出すと泣けてくる。
「他の人にキスとかやだ……。蓮さんは私の物なのに……」
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