11.禁断のキスにて

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 布団に雫が落ちてぼんやりとした模様を描く。  蓮が掛けてくれたに間違いない。 「優しさは私にだけに頂戴……? 他の人にあげたらやだぁ……」  分かってる。こんな事を言ったら蓮だって呆れるだろう。  でも、言わずにはいられなかった。  口移しでも何でも、他の人にそうゆう行為をするのは嫌。悪気がなくても嫌。  自分だけを見て欲しい。 「雪弥……」  自分が怒っているのに蓮の顔はどこと無く緩んでいる。  人を馬鹿にしてるのか? 「ニヤニヤしないでっ! ほ、本気で言ってるんだからっ!」  恥ずかしい台詞に今更ながら血が沸騰してるんではないか、と思うくらいに体が火照る。  勢いの副作用はかなり自分に不利だった。 「……可愛い」  むくれた顔を見て蓮はポツリ、とそう漏らした。  と、同時に右手で顔を押さえる。 「ば、馬鹿にしてるのっ?!」 「違いますっ! あー……もう……」  何か壁に当たったらしく蓮は耳も、顔も、指先までの全身に紅葉を散らした。
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