2.カフェテリアにて

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「ここにしましょう」  日が当たる暖かい場所を蓮は選んだ。湿り気のある重い制服を乾かすにはちょうど良い。  軽い風が頬を通り過ぎて顔に掛かる髪を掬った。  蓮は半オールバックに右をワックスで固めている為、左のさらさらの髪だけが揺れる。自然に誘われる髪は艶があり手入れが行き届いているのが分かる。 「ん? 顔に何か付いてますか?」  風に目を細めた蓮は黙って風の先を見る雪弥の視線に気付いて声を掛けた。 「ううん。何でもない……」 「そう? あっ」  不意に雪弥の頬に蓮の指が伸びた。唇に爪の綺麗な形が当たる。 「髪、食べてますよ」  蓮の目が少しだけ笑う。横には気付かないくらい小さな黒子(ほくろ)があった。
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