2.カフェテリアにて

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 穏やかな瞳は芯まで黒い。何処までも黒くて静かだった。 「あ……りがとう」 「どういたしまして。さ、飲んでて? そろそろ来る頃だから……」  蓮は雪弥にカフェオレを薦めて腕時計に視線を落とした。    その時、蓮の後ろの方に蓮並に良い男がキョロキョロしながら歩いていた。  手足が長く、真っ黒のスーツを優雅に着こなす男は一瞬、雪弥を見る。そして靴を鳴らしながら歩み寄って机の前で足を止めた。 「待たせたな」  低い声は蓮とは違い冷たい感じがする。人間が本来備えている“温もり”が欠如したような男だ。  黒淵眼鏡のレンズの向こう側の瞳は表情を隠している。非常に感情の変化が読み取りにくい。  どちらかというと蓮の雰囲気とは真逆に位置している。 「待ってないよ。座って」  男は蓮の言葉を受けて空いている二つの席の一つに腰掛けた。  遅い昼休みを堪能しているOLは男を目の保養にしている。動作一つ一つに広がるざわめきに雪弥の居心地は悪かった。
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