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「私は本条 初音。はじめまして、水谷さんの奥様」
美少女なのに全身から滲み出るオーラは綿毛のよつに柔らかい。薔薇のような刺々しさがあると思っていたが真逆だ。
そんな解析をしていて初音の言葉を受け流してしまいそうになる。
『お、奥様?!』
顔を真っ赤にして挙動不審になる蓮と雪弥の異常な驚きようが被ってしまう。
蓮は耳から首まで見事な朱色をさせた。
「そう言われると嬉しいんですけど……照れます。でも、まだ夫婦ではないですよ。二人にこれを書いて欲しくて……」
蓮はついさっき市役所へ取りに行ったばかりの婚姻届を白兎と初音の前に突き出す。
既に蓮の名前と雪弥の名前は記入済みだ。
太くて力強い達筆な文字が蓮、細くて流れるような書体が雪弥の物。
「二人に証人になってもらえると有り難いです」
二人分の記入欄を人差し指で指してボールペンを置いた。
「構わないよ」
白兎は含み笑いを浮かべて初音の束縛から腕を抜いた。左利きらしい。
滑らかに綴られる字を書く姿は見惚れる。横顔を眺める初音の目は恋する乙女、そのものだ。
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