2.カフェテリアにて

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「失礼ですけど……白兎さんと初音さんのご関係は?」  雪弥は恋人辺りに目をつけてどちらともなく聞いた。  すると、白兎の手元が一瞬ぶれ、初音の表情が陰る。 「あの、言いたくなければ結構です……」  慌てて取り繕う雪弥に白兎が顔を上げて射抜くような視線を向けた。氷のような冷ややかな物だが瞬きをするとただの黒い目が佇む。 「叔父と姪。俺は初音の叔父だ」  たいして歳の差が見えない二人の意外な関係が明らかになった。 「見えないでしょう? 親戚に。最初に会ったもそんな関係だなんて思わなかったもの」  初音は無理矢理作った笑顔を雪弥に見せた。  複雑な事情で、でも、人を想う気持ちには嘘をつけない。例えどのような繋がりがあろうとも目で追い、耳で聞き、肌で感じ、ありとあらゆる感覚が想い人に向く。  雪弥は今ならそんな恋の病が分かる気がした。  それは横に座る変わった会社員の蓮が教えてくれた新しい感情。  人と向き合うことを嫌っていた雪弥が蓮から得た人間らしい物である。
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