2.カフェテリアにて

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「ふん……、壁なんか関係無い。俺は初音を本気で好いてる」  天然の緩やかなウェーブを汲み取る手がエロい……。笑う口元も撫でる視線も初音に対する愛おしさが溢れ出している。 「四六時中これを見せ付けられる気持ち、分かります?」  溜め息と苦笑を同時に漏らす蓮の顔に雪弥はドキリ。  ばくばくの心臓は欠陥商品では無いのか、と疑ってしまう。 「あの、大切な物を大切にするのは……良い事だと思いますけど?」  遠慮がちに自分の考えを主張する雪弥に蓮は太陽の手を頭に乗せる。 「そうかもしれませんね。雪弥は本当に大人です」  雪弥なら不機嫌に終わるところを蓮はいとも簡単に乗り越えてみせた。  人の意見を受け入れられる蓮の方が大人である、と雪弥はひそかに訂正を加える。  不思議と蓮から滲み出る人柄の良さは雪弥に浸透して笑顔を引き出す。蓮が意識的にしているのか、無意識にしているのか定かではないが零れる自分の笑顔は嘘をつかない。 「お前らこそ1時間前に出会ったばっかりか?」  やり取りの一部始終を見ていた白兎が蓮と雪弥に疑いの眼差しを向けた。
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