2.カフェテリアにて

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「そう言ったでしょう。ほんの少し前に橋の下で会ったんですよ」  蓮が平然と言い放つ白兎は釈然としない顔付きをした。 「じゃぁ、聞くけど、そのちんちくりんの何処が良いんだ?」  自分を形容した“ちんちくりん”はあながち間違ってはいない。  怒るに怒れないではないか。  聞かれた蓮はというと、真っさらな瞳で雪弥を上から下まで観察する。  そして出した答えに白兎は手から顎を落とした。 「分からない……」  理由の解答が“分からない”とは何たる失礼。張本人が目の前に居るのだから、適当でも良いから「可愛い」くらい言って欲しいものだ。 「分からない。ただ……雪弥が水から出て来た時に体中を衝撃が駆け抜けたんですよねぇ。それで気が付いたらこの有様って訳」  この有様は結婚届を指すのだろう。確かに“分からない”訳だ。  蓮は嘘をつけない、つかない。  言ってる事は矛盾だらけだが、間違った事は何一つ述べていなかった。  白兎は「ふーん」と次は納得したようでそれ以上の追求には及ばなかった。
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