2.カフェテリアにて

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「それじゃぁ、コレ。俺は帰るわ」  椅子から立ち上がる白兎に続いて初音は腕を取る。 「またね。水谷さん、雪弥ちゃん」  最後まで初音は笑顔でいた。癒し系の退場に少しだけ寂しくなる。  机の上には真っ黒に埋まった婚姻届があり、いよいよ現実味が増した。 「あとは……提出するだけ……か」  蓮は雪弥を横目で確認する。  手には半分以上残っているカフェオレがあった。  蓮は何か考えているのか無意識に雪弥の手からカップを取り上げて口を付ける。 「あっ」 「えっ?」  ゴクリ、と蓮は喉を鳴らしてから時間差で自分の「あっ」に反応を示す。 「どうか……しました?」  蓮は本気で心配そうな顔をしたので雪弥は慌てて今発した「あっ」を取り消した。たかが“間接キス”ごときに照れるなんて忍耐が足りない。 「ごめんなさい……。勝手に飲んでしまって……。考え事してると、つい……」  そんな事では無いけれど……クセならしょうがない。  それよりも蓮の発言のほうが気になる。 「考え事って何?」 「あー……。住む所をどうしようかなぁ、と思いまして。施設にそのまま居てもらっても結構ですけど、やっぱり一緒に暮らしたいですし……、でも、家狭くて……部屋が無いんですよねぇ……」  男の独り暮らしを続けていくつもりだったなら確かに部屋に余裕が無いのは当たり前だろう。  自分との出会いはこれからの人生計画を狂わしたに違いない。
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